第34回「スウェーデンを支えた産業遺産」

久保美智代 フリーアナウンサー 世界遺産ウォッチャー
 

  日本が長い梅雨に入っている7月中旬、北欧のスウェーデンを旅してきました。
最高気温は25度前後。空気はカラッとしています。でも、夏は短く、観光シーズンはわずか2ヶ月。快適な季節を楽しもうと、どの観光地も大勢の人たちで賑わっていました。

 もちろん、私の旅の目的は世界遺産をまわること。日本ではあまり知られていませんが、スウェーデンでは、日本と同じ数の13ヶ所が登録されているのです。
 
 中でも興味深かったのは、「ファールンの大銅山地域」でした。ファールンは首都ストックホルムの北に位置する古い街です。銅の採掘が8〜9世紀頃に始まり、産出量は17世紀半ばには世界の3分の2を占めました。1992年に操業が終わりましたが、施設や坑道、住宅が保存されています。


 驚いたのは景観です。ポカーンとあいた巨大な穴。露天掘りの採掘跡で、側面は銅の赤土が地層のようです。この厳しい景色が、スウェーデンの近代化を支えた象徴でした。
  ガイドツアーで坑道に入りました。ヘルメットとレインコート姿で、探検隊のよう。細いトンネルの先には広い空間があり、壁や天井はノミで削られ、崩れないよう木の櫓で補強されていました。ガイドさんの指差す方向を見ると、背丈くらいのモミの木があります。穴の中で、坑夫たちはクリスマスを祝ったのです。


 

 この時、私は彼らの苦労に気づかされました。作業員たちの住宅地も歩きました。
どの家も、壁はれんが色。鉱山から出る廃石から取られた粉が塗られているから、とのことでした。


 産業遺産は、国の発展の歴史であり、
それを支えた人々の歴史です。その面白さに気づかせてくれた世界遺産でした。
日本では来年、島根県の石見銀山遺跡の世界遺産登録が有力となっています。これを機会に、他の産業遺産も注目を浴び、日本の近代史がもっと広く知られればうれしいです。

 
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