山あいに続く緩やかな棚田。奥まった森の中の茶畑。奈良の春日山を越えたところにある柳生は、のどかな里です。新緑が生き生きと輝く5月、この地を訪れました。
柳生といえば、徳川家の剣豪指南役に抜擢された柳生一族の拠点。中でも十兵衛は、映画や時代劇にも登場する人物です。剣豪を生み出す土壌はどこにあったのか、そう考えると、静寂の中にも研ぎ澄まされた空気を感じ、背筋が自然に伸びていました。
まず訪れたのは、一族の菩提寺、芳徳寺。里を一望できる高台にあります。十兵衛の祖父で柳生新陰流を築いた石斎舟宗厳(せきしゅうさいむねよし)の菩提を弔うために建てられました。庭の大木がゆっさゆっさと揺れて手招きしているようです。一族の墓は、本堂裏手の薄暗い杉林の中にありました。その数、約80基。一族の結束力を見ました。
寺から南へ山の奥深くへ進むと、天之石立(あまのいわだて)神社があります。鳥居のすぐ先に、巨大な岩が待ち構えていました。しめ縄が飾られ、御神体のようです。ここは柳生一族の修行の場所。その迫力に少したじろぎつつ先に進むと、今度は伝説の石を発見しました! 「一刀石」です。私の身長をはるかに超える巨石が、鮮やかな切り口で2分割されていました。
石斎舟宗厳が天狗と間違って斬った伝説があります。しかし、一族の剣にかけた生き方を考えると、本当に切ったように思えてきました。
最後に、奈良県唯一の武家屋敷、柳生藩家老の小山田主鈴(おやまだしゅれい)の邸宅に行きました。落ち着きある日本家屋で、縁側に腰を下ろすと日本庭園が見渡せます。田舎に帰ってきたような、ほっとした気分になりました。
戦乱にありながら「人を斬らず生かす剣」を編み出した柳生一族は、のどかな里の風土が生み出したものかもしれません。
|