第30回「高速道路から大和平野を思う」

久保美智代 フリーアナウンサー 世界遺産ウォッチャー
 

 高速道路の真ん中を歩いてきました。そんなことができるの?と思うかもしれませんが、この 道路は、4月に開通する京都・奈良・和歌山を結ぶ京奈和自動車道の一部。
PRイベントで約2000人が歩いたのです。

 広々とした大和平野を貫く高架の道路は、歌舞伎の花道のよう。両側に見渡せる平野には高いビルもなく、大和三山も望めるのどかな地が広がっていました。時折ガタンゴトンと走る近鉄電車が、模型のように過ぎていきます。歩きだからこそ、味わえる風景でした。


 今回、高速道路の話題を取り上げたのには理由があります。道路統計年報によると、奈良県の高速道路は18.2kmで、47都道府県で最も短いのです。道路建設が一番進んでいない県ともいえます。実際、県の北端にある奈良市から南へ延びる主要道路はいつも渋滞。イライラするドライバーも多いはずです。


 しかし一方で、奈良は遺跡の宝庫でもあります。遺跡が建設予定になることもあるのです。例えば「卑弥呼の墓」とも言われる箸墓(はしはか)古墳など無数の古墳が点在する大和(おおやまと)古墳群では、ここを貫くバイパスが造られていました。古墳めぐりの途中で大規模な工事に直面した時は、ショックを受けました。

 また、京奈和道の途中には世界遺産の平城宮跡があり、問題になっていることは、古都便りの第1回で書きました。専門家の委員会で検討された結果、景観に配慮し、道路は平城宮跡を迂回したルートで地下に造る方向で進んでいます。地下となると建設費もふくらむことでしょう。

 人口減少時代になり、道路は豊かさの象徴ではなくなってきました。むしろ、その地域にしかない古いものにこそ、心の豊かさがあると思います。とはいえ利便性を考えると、道路建設を望む声も多いでしょう。依然、難しい問題です。

 
大和平野を見下ろす高速道路の花道を歩きながら、そんなことを考えました。

 
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