第12回 「古都トレドの光」
久保美智代 フリーアナウンサー 世界遺産ウォッチャー
 

 「スペインを一日だけ旅するなら、迷わずトレドに行きなさい」。ヨーロッパでは、昔からそういわれているそうです。今月は、同じ古都として、奈良と姉妹都市であり、中世の街並みをそのまま今に伝える街、トレドから便りをお送りします。

 トレドは、スペインの首都マドリッドから、車で1時間ほど南に下ったところにあります。9月半ばというのに、ジリジリと皮膚が焦げるような日差し。まずは、スペインの太陽に洗礼を受けました。

 トレドの街は、急な坂道が多く、細い路地が迷路のように張り巡らされています。まるで映画で見たような中世の世界です。というのも、ここは高台にあり、三方をタホ川に囲まれた天然の要塞なのです。奈良に平城京が誕生したほぼ同時期の
711年、イスラム教に支配されました。キリスト教徒が奪還したのは約400年後。当時の名残を示すイスラム様式の教会もあります。

 町の中心には、270年の歳月をかけて造られた大聖堂が、どっしりと立っています。ここはスペインのカトリックの総本山。一歩中に入ると、黄金色の祭壇がまばゆいばかりの光を放ち、裏へ回ると、無数の天使たちの彫刻が、見る者を天上界に誘います。質素な作りの中に美を重んじる日本の寺とは対照的に、キリスト教徒の情熱と信仰の激しさを感じました。

 日の出前、私は町を一望できるホテルにいました。空の色に合わせて街がほんのりピンクに色づいていきます。激動の歴史とは裏腹に、しっとりとして実に美しい景色でした。

 「カラーン、コローン、カラーン‥‥」
朝を告げる鐘が鳴り響きました。今日も灼熱の太陽が私たちを待ち受けます。

 
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