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日本で12件目の世界遺産、「紀伊山地の霊場と参詣道」が7月に登録されました。奈良の「吉野・大峯」と和歌山の「高野山」「熊野三山」、三つの霊場とこれらを結ぶ参詣道です。そのうち訪れるのが最も困難な大峰山脈の尾根沿いに走る山伏たちの修行道、大峯奥駈道(90km)の一部を歩いてきました。
8月のある日。抜けるような青空の下、私は、岩がごつごつした急斜面をひたすらに登っていました。これが大峯奥駈道。道幅は狭く、険しい道のりです。道が過酷なせいでしょうか、歩く人はまばらで、辺りはとても静か。耳を澄ますと、風が森を通り抜ける音だけが聞こえてきました。
日常とは完全に切り離された世界です。3時間半歩き続け、
やっと八経ヶ岳につきました。1915m。ここは近畿最高峰の山。重なり合った山々が眼下に広がり、辺りを自由に飛びまわる赤とんぼが、一足早い秋の訪れを告げていました。
翌週は、山伏さん二人に連れ添われ、さらに山奥の前鬼(ぜんき)に行きました。数日前の大雨のため、所々、土砂崩れで橋が流され、道がありません。歩いているのは私たちだけ。先導する山伏が、一歩一歩足場を確保しながら進んでいきます。突然、後ろの山伏が、足を滑らせ、木の枝一本にぶら下がりました。何とか助かりましたが、少しも気を許すことができません。鎖だけが頼りの岩登りには、足が震えました。
どうして、こんな過酷な道を行くのでしょう? その答えは最後に待っていました。やっとたどり着いた地に見たのは、美しい滝。とめどなく流れる水が、疲れた心を浄化してくれます。
無味無臭の美味しい水は、試練を超えた者だけが得られるご褒美なのです。
信仰の道・大峯奥駈道。それは、自分への挑戦の道でした。
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