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このコーナーは各界でユニークな活動をされている人の生きざまを、
インタビュー形式でお送りしています。
3月

 真野八郎氏に聞く 〜後編〜

真野八郎氏まの はちろう

真野 八郎(昭和7年生まれ)
(株)真野建具製作所 代表取締役
http://homepage3.nifty.com/mano/
昭和23年4月10日 (株) 加賀田組 木製建具職人として入社
昭和30年8月31日 退社
昭和30年9月1日 独立 真野建具製作所 設立
昭和52年5月1日 株式会社 設立 代表取締役に就任
真野博氏現在に至

写真はテレビ東京で放送された番組から一部使用しております。

   

 今日は木へのこだりというか、いま建具の業界がどういう現状になっているかとか、そんな話を聞いていこうと思います。

…と始まったお二人のお話が前回から続いています。
後半は息子さん(博さん)の奥さま(樹子さん)も加わって話が弾みました。

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 もう一つ、日本の建具のすぐれているところは、例えば引き戸だったら少し開けて風を通そうとか、外が見えるうにしようとか、雪見障子だったら閉じたまま外が見えるとか、自由自在にできるでしょう。洋風のドアだと、開けるか閉じるかで、何か止めるものをつくらない限りその中間はできない。日本の建具は機能面でそういうふうにすぐれていると思うんだよね。狭い日本の住宅ではそのほうがさらにメリットがあると思うけど、どうしてみんなドアになっちゃったのかなぁ。
八郎 デザインというか、洋間に対してドアのほうが機能的に見えるんだろうね。だけど最近は洋風の建物にも引き戸が入ってきたね。

 使ってみるとそっちのほうがいいということがわかってきたんだね。
山門写真ところで最近は神社の仕事とか文化財の復元とかやっているけど、ああいうのはふつうの家の仕事と比べてどうなの。苦労することとかあるの?

八郎 昔のままに残したいということてやるわけだから、日本の木を使って昔のやり方でやるんだけど、結局材料集めとか、予算が決まっている中でやらな ければいけないとういうことがあるから結構大変は大変だね。相当前から計画 して材料を集めているけど、予算がなくて使えないで材料だけ残ってしまうということもあるしね。今はかかっただけもらえるような時代ではないし、そうかといって仕事をとってから材料を集めたんじゃ間に合わないし値段も高くなる。ふつうの建具をつくるための木材は1年ぐらい乾燥させればいいんだけど、特殊なテーブルとか茶箪笥をつくる欅なんかは10年も20年も乾燥させなければ狂ってしまっうからね。それでも縮んだりしなったりするんだけどね。

 かなり長期の計画でやらなきゃいけないんだね。
いま真野建具は職人さんが何人くらいいるの?

八郎 全部で6人だね。ほかに忙しいときには駆けつけてくれる人もいるけど。

 結構一人でやっている建具屋さんが多いんでしょう。
八郎 ほとんどが一人か二人だね。今はそういうふうに建物が変わったために、去年あたりは結構やめた人もいるよ。やめたといっても仕事があればするだろうし、なければ遊んでいるみたいな人が結構いるね。

 一時は埼玉の小川あたりで大規模に既製品の建具をつくっていたでしょう。
工房風景八郎 そう。おれたちも建具の本場ということで小川に見学に行ったりしたものだけど、今はどうも全滅しちゃったんじゃないのかねぇ。

 そういう建具屋さんが今は手造りの家具屋さんとして生き残っているところもあるようだね。
八郎 和室がなくなったから、そういう方向に進まざるを得ないんだろうね。

 洋間だって戸はあるはずでしょう。なぜだめなの?
八郎 洋間は戸の枚数が少ないのさ。和室だと引き戸があるし、窓際には障子がつくし、洋間はそれがカーテンになるから。それに住宅が小さくなったために遊んでいる部屋がなくなったからね。

 注文を受けた業者も、大体坪幾らで請け負っているんだわ。今は安い家は坪30万円以下だから、それで利益を上げるためにはやっぱり既製品を入れて洋風化したものにするしかないのさ。和室をつくったら材質も見えるからやっぱりいい木を使うほかないし、大工さんの手間もかかる。今は利益率の追求がまず第一だからね。
工房風景
 それにああいうのをつくる大工さんは技術は要らないのさ。削ることもないし、ただ機械の鋸(ノコ)で切ってぶつければ終わりだから。今はそういう家が80%ぐらいじゃないのかな。高田建築では、既製品を全然使わないで木を使って、大工さんの手間もかけてやっているけど、まあそれだけもらっているんだろうけどね。中にはそういうのがいいという人もいるんだね。だから建てたらほとんど見学会をやって、そこからまた新しい仕事がくるんだね。去年うちは高田さんのところだけで30棟近く仕事をしたからね。

 いいものを見ればみんないいと思うんだろうね。みんなわからないままにそういうふつうの建物になっちゃうんだろうね。本物に触れる機会がないから。
 道具について聞きたいんだけど。例えば鋸(ノコ)とか鉋(カンナ)とかは何種類ぐらいあるの?

八郎 今はほとんど機械だけど、やっぱり10種類ぐらいはあるよ。目のこまかいものとか粗いのもとか、縦引きとか横引きとか、それぞれ用途があるからね。鉋とか鑿(ノミ)なんかも何十種類もあるけど、今は欅とかの特殊なものでない限りはほとんど機械になったから、実際に使うのは昔みたいに多くはないね。バブルの時代に忙しくてどうしようもないから機械を入れよう、入れようという流れになって、今ではほとんどが機械になっている。だから今はうちの見習い子も1年たっても鉋かけもできないよ。昔は鉋かけばかり何カ月もやっていたけど。

 そういう道具は建具屋独自のものもあるの。大工さんでは使わないようなものとか。
八郎 大工さんが使うのと大体似ているけど、ただ大工さんよりは細工が細かいから、細かい鉋とか、細かい道具がいっぱいあるけど、そう特殊なものはないね。建具屋というのは真っ四角の品物だけつくっているから、仏像をやるみたいに曲がった鑿が何十種類もあるということではないからね。彫刻なんかやる人は50種類もの鑿を使っているけどね。

 今後の展開としてはどんなことを考えているの?
八郎 今は難しい時代に入ったから、建具だけではだめだから、ちょっとした端材というか、余ったような木を生かして何かつくれないかなと思ってやっているんだけどね。

工房風景 昔だったら捨てていた木とか古い箪笥の金具をもう一回蘇らせて使うみたいなことだね。そういうことはどうして思いついたの?
八郎 自分が好きだからね。同じ木でもそれぞれに模様がおもしろいとか。自分でそう思うから、ほかにも好きな人もいるんじゃないかなと。

 箪笥の金具も、大正時代のものはプレスのもので、軽くて薄いけど、その前の時代のものは手造りで鍛冶屋がたたいてつくったもので、重量感があるのね。

 今は和骨董というか、アジアン家具とか和の雰囲気のものが東京あたりで結構はやっているね。無垢の木を使ってインドネシアとかタイとかでつくって、染色して何となく古く見えるようなものが。それがまた安いんだわ。通信販売もやっているし。
八郎 職人がつくると手間賃だけで1日万金がかかるからね。日本は職人の賃金が一時上がりすぎたんだろうね。だって大工さんが一日3万円ぐらいという時代があったんだから。今はハウスメーカーの下請をしている大工さんは1万も取れないらしいけど。

 一つの問題はやっぱり人件費かなぁ。
工房風景樹子 皮肉なことにものすごくきれいに仕上げられたものに本物感を感じなくなっているんですね。一つひとつのものが厳密に規格化されているのではなくて、少しずつサイズも違うし顔も違うといったものにより本物感を感じるのかなという気がするんですけど。
八郎 我々職人はきれいに仕上げようということばかり考えているんだよ。例えばこのくらいの板を逆目のないようにきれいに仕上げるためには2時間も3時間もかかるわけね。3時間もかかったら、板そのものはただでも手間賃だけで1万円近くかかるか。それでは買う人がいなくなる。だから粗木をちょっと落とししてうるしを塗るぐらいでいいのかなと思っているんだけどね。

樹子 あまりもきれいすぎると、本物なのかどうか区別がつかないですね。
例えばどれが漆で、どれがポリウレタンで、どれが木なのかが全くわからない。似せてつくる技術が発達して、そういうものに慣れてしまったんですね。今のアジアン家具なんかは結構ゴツゴツした感じで、削った跡も残っていますよね。

 一つのキーワードは、仕上げすぎないということかな。
 うちの雨戸はわざと仕上げなかったけど、ああいうのがいいんだよね。むしろきれいにしすぎると、ようく触って、たたいてみないとわからないから。その辺のバランスかな。
 ところで、元気そうだけど、健康状態に問題はないの。何か特別な健康管理とかしている?

工房風景八郎 元気だよ。特別なことは何もしていないけど、木の家に住んで、体を動かして好きな仕事をやっているから元気でいられるんだろうと思っているけどね。

 最後に何か言い忘れたこととか伝えたいこととかある?
八郎 木が好きな我々からしたら、もっと木目とかそういうものをみんなに知ってもらいたいと思うね。このテーブルの木目だって百年やそこらではできないんだからね。

 こういう木目を見ていると、模様が美しいということもあるけど、何百年もかかってできたこの年輪を見て、自分の歴史とあわせて考えてみると、これはすごいことだあなと思うものね。
八郎 まあ木目なんかを好む人は特殊な人だろうけどね。もっともそうざらにあるものではないし、求めようとすれば結構金がかかるけどね。

 こんなところでいいかな。今日はどうもありがとうございました。

真野八郎氏プロフィール 番外

 越後新潟で、木製建具にこだわり、一般住宅から神社・仏閣や豪農の館などの木製建具を設計・製造。また、新潟ビックスワン(ワールドカップサッカーで使用された競技場)でワールドカップサッカー記念ボールを展示してある木製キャビネットの設計・製造も行いました。
現在では、「再生」と「本物」をテーマに、これまで廃材として捨てられる運命だった無垢の木の端材や古箪笥の金具に「あらたな命」を吹き込むべく模索中。

 晩酌の日本酒が健康のもと?、いまでも趣味の夏はゴルフ、冬はハンティングを楽しむ。
木製の仏像を彫ったり、あらたな木製品の開発に時間を使ったり、趣味と仕事の境がない。

 現在の住宅は、木製住宅といってもビニールクロスなどで囲まれ、窓や玄関も気密性の良いアルミサッシで塞がれています。これが原因でシックハウスの問題が大きくなりました。いま新しい住宅を建てると、電気を使って24時間強制換気システムを導入するように義務付けられています。なにかおかしくないですか?そうです、昔の家は、窓のすき間から絶えず空気が出入りしていました。いわゆる「すきま風」ですが、実は大事な働きをしていた様ですな。

 現在の住宅を外からみて「なにか物足りない」、「同じような家だな?」、「なにか安っぽいな?」と感じたことはないですか?木製建具の窓がおさまった昔の家の住宅を見たことはありませんか?窓や玄関は、人間に例えれば「顔」の役目を果たしています。どうして既製品の建具ばかり使うのでしょうか?自分のオリジナルの窓や玄関ドア−を考えて見て下さい。
木製建具は、心と身体に貢献します。

真野博氏 新潟中央競馬場(競走馬の厩舎は木製建具でできています。人間の住宅より高価な建具がおさまっています。)
中之口 沢将軍の館(復元された豪農の館)
木場 満行寺 庫裏
下塩俵 西方寺 本堂
新津 北上神社 本殿 神楽殿
角田山 妙光寺 本堂 祖師堂
諸法山 菅谷寺 庫裏
蒲原 浄光寺 山門
新潟市 護国神社 大拝殿

マスコット犬

今回の聞き役、
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