最近、新しいスイーツとしてヒツジやヤギの乳でつくられたプリンが流行しています。今回ご紹介するウマの乳を味わった経験のある方はとても少ないでしょう。その味は乳糖量が多く、甘いです。モンゴルではウマの乳を発酵させてお酒をつくっています。
搾った生乳を冷却後、ウシの一枚皮でつくった発酵容器(モンゴル語でフフル)に注ぎ、専用の攪拌棒で攪拌してつくります。加熱することは一切ありません。
フフルの中には発酵が進んだ馬乳酒が入っていて、毎日乳が継ぎ足されていくのです。複数の乳酸菌と酵母の働きで、アルコールを2.5%前後含んだ軽い発泡性のあるドブロク状の飲みもので、老若男女を問わず好まれています。
草原では陽が暮れる頃、ゲルで皮袋を攪拌するカッポン、カッポンという音がします。モンゴルの夏の音です。連日どんどんつくり、どんどん飲むのです。馬乳酒を飲むと「結核にならない」、「健康によい」、「胃腸によい」、「血圧を上げない」など医学的効能が伝承されてきました。医療を受けることの少ない遊牧民の生活において、大切な飲み物でした。
成人男子では夏季に、食事をほとんど摂らず、馬乳酒だけで過ごす人も珍しくありません。1日の飲用量は5〜10Lにもなります。1日5Lの飲用によるエネルギー量は約2000Kcalとなり、1日に必要なエネルギー量が賄える訳です。まさに「液体食べ物」といえましょう。
馬乳酒は各種ミネラル、ビタミンが豊富で、特にビタミンCが8mg/100mlも含まれています。普段の食事で野菜、果物を摂らない遊牧民にとって、ビタミンCの補給源としても重要でした。馬乳酒は、はじめて飲むとその酸っぱさに驚きますが、乾いた草原では、何よりも渇きを癒やす飲み物で、その飲用は夏の楽しみなのです。来客があると自慢の馬乳酒を勧め、家畜の話をします。
馬乳酒を大量に飲むことで天文学的な数の微生物の菌体が腸管に入ります。胃液により死菌になりますが、菌体を構成するアミノ酸など、様々な物質が腸内細菌に活用されます。そして、菌体に含まれている難消化性多糖類が、食物繊維の代用として腸管の中の老廃物を包んで排出していると考えます。飲用の効果として、馬乳酒に含まれるアルコールが心身をリラックスさせるほか、微生物の代謝産物が血清中のリンパ球を活性化させ、免疫力活性化に関与していることを見出しました。馬乳酒の秘めた謎が明らかになってきています。この夏、草原で馬乳酒を飲んで腸管のお洗濯、リフレッシュは如何ですか。
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