ダイエットブームに想う              青江 誠一郎
 

あおえ せいいちろう

昭和33年10月東京生まれ
現職:大妻女子大学家政学部食物学科 助教授 農学博士
専門:食品および栄養化学
研究:食品成分(食物繊維、脂質、ミネラル)の構造と生体調節機能
プロフィール:千葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了
雪印乳業株式会社技術研究所を経て
平成15年度より大妻女子大学家政学部へ

 

 ダイエット用健康食品でまた被害者が出ました。いつになったら,楽をして痩せたいという願望が消えるのでしょうか。もともと人間は飢餓に耐えるため,身体を守るためにエネルギーを脂肪として効率よく貯めるようにできているのである程度の脂肪は必要です。また,脂肪はホルモンを分泌する組織でもあります。

 さて,ドラッグストアーを覗いて見ますと女性をターゲットにした様々な商品が出回っています。前回は痩身作用があるというお茶で被害が出ましたが,今回はサプリメントでの健康被害でした。インターネットで個人輸入が簡単にできるようになったことも手伝ってか,輸入健康食品の被害が多いようです。詳しい情報は,独立行政法人 国立健康・栄養研究所のホームページに「健康食品」の安全性・有効性情報が掲載されています(http://hfnet.nih.go.jp/main.php)ので参考にして下さい。

 私の勤務する大学の学生もそろそろ夏の準備と称して食事量が減ってくる時期で,極端な場合は一食抜いてしまう学生もいます。授業では間違ったダイエットをしないように注意していますが,そのような子は集中力がなく聞いていないようです。女子学生でいわゆる肥満症の子はほとんどなく,普通体重以下の子が自分は他人より太っていると思って何らかのダイエットをしているようです。

  このホームページは骨に関心のある方々がよくご覧になるかと思いますが,骨と言えばカルシウム,カルシウムといえば乳製品という連鎖が頭をよぎります。実は,乳製品中のカルシウムが体重調節に関係しているという研究が最近話題となっています。少し情報に脚色が加わり,ヨーグルトダイエットとかスキムミルクダイエットなどと紹介されている記事をご覧になった方もいらっしゃると思います。研究内容に関して某テレビ番組でコメントした私としても責任を感じていますが,スキムミルクがスーパーマーケットで一斉に売り切れになったほどの一時的なブームにもなりました。

 カロリー摂取が一日1900kcal以下の場合には,カルシウム摂取が高くなればなるほど体脂肪量が低いというティーガーデン博士(パデュー大学)の講演が日本での発端だったように思います。その後,ゼメル博士(テネシー大学)がカルシウム強化ヨーグルトを用いて,ヒトの試験を行った結果,体重減少,特に腹部脂肪の減少に効果的であるという発表を行い話題となりました。この研究では一日のカルシウム摂取量は1100mgで,600mg相当のカルシウムをヨーグルトから摂取するようにした試験です(残り500mgは日常の食事から摂取)。一日1100mgのカルシウムを摂取するのは現代の日本人の食生活ではとても無理であろうという事から,低脂肪でカルシウム量はそのままのスキムミルクを乳製品に増量して食べれば効果が得られるのではというのが最近の記事の真相だと思います。

 確かに,論文を見る限りでは乳製品のカルシウムに体重調節作用があることは事実のようですが,なぜ乳製品のカルシウムが効果的なのか,どれくらいの量が妥当なのか,なぜ体脂肪が減るのかなどについては未だ結論が出ておらず,米国の肥満関連の学会誌でも量的な関係とメカニズムを明らかにすべきとコメントしていました。私自身は,乳製品からカルシウムを多く摂取することは骨にとって良いことなので仮にダイエットに関係なかったとしてもお薦めであるとは思います。